【第19回】AIドリルで「個別最適な学び」は実現できるか?

「AIドリルを導入すれば、個別最適な学びが実現します」——教材の営業資料やパンフレットで、こうした売り文句を目にしたことがあるかもしれません。今回は、この言葉を少し立ち止まって読み解いてみます。
前回(第17回「教育委員会のAIガイドラインを読み解く」)まで、生成AIを軸にコラムを進めてきました。今回扱う「AIドリル」は、実は少し性質の異なるAIです。まずはそこから整理していきましょう。
「AIドリル」は生成AIと同じ仕組みではない
第16回(Geminiは学校で使っていいの?~生成AIの基本を整理~)で扱ったGeminiのような生成AIは、LLM(大規模言語モデル)を使ってその場で新しい文章を作り出す仕組みでした。一方、多くのAIドリルでは、学習履歴や理解度に応じて問題・教材を調整するアダプティブラーニングという考え方が中心となっています。代表的な製品の1つであるQubena(キュビナ)も、この仕組みを採用したアダプティブラーニング教材として知られています。
同じ「AI」という言葉でも、指しているものは大きく異なります。「AIドリルで個別最適な学び」を考えるとき、第16回で扱ったハルシネーションのような生成AI特有の注意点が、そのまま当てはまるわけではありません。まずはこの前提を揃えておくことが大切です。
「個別最適な学び」の正しい中身
「個別最適な学び」は、2021年1月の中央教育審議会答申「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して」で示された考え方です。実は2つの要素の組み合わせとして定義されています。
指導の個別化
一人ひとりの理解度や進度に応じて、教師が指導方法・教材・学習時間などを柔軟に変えることです。
学習の個性化
子ども自身が、自分の興味・関心や学習進度に応じて、学習の課題・内容・方法を選んだり決めたりすることです。

この2つを学習者視点から整理した概念が「個別最適な学び」です(教師視点から整理した概念は「個に応じた指導」と呼ばれます)。さらに、学校教育では個別最適な学びと協働的な学びを一体的に充実させることが求められています。
AIドリルだけで「個別最適な学び」が完成するわけではない
この定義に照らすと、AIドリルの代表的な機能である、習熟度や学習履歴に応じた問題・教材の提示は、主に「指導の個別化」を支援する機能と捉えられます。
人間中心の利活用
生成AIの出力をそのまま正解として受け取るのではなく、教職員・児童生徒自身が考え、判断するための補助として位置づける考え方です。「使うこと」自体を目的にしないという方向性がここに表れています。
「学習の個性化」は自動では実現しない一方で、児童生徒自身が「何を」「どう」学ぶかを選ぶ学習の個性化は、AIドリルを導入しただけでは自動的には生まれません。教育の専門家の議論でも、教師が良かれと思って与える個別指導であっても、子ども自身の意思による選択が伴わなければ、個別最適な学びとして十分とは言えない、という指摘があります。
「AIドリル任せ」にしないために
AIドリルが得意とするのは、主に一人ひとりの習熟度に合わせた「指導の個別化」です。しかし、答申が掲げるもう一つの柱である「学習の個性化」や「協働的な学びとの一体化」を実現するためには、ツール任せにするのではなく、教師による意図的な授業デザインが欠かせません。 ここでは、AIドリルの効果を最大化し、本来の「個別最適な学び」へとつなげるための3つのポイントをご紹介します。
選ぶ場面を、意図的に用意する
ドリルに取り組む単元やペース、振り返りの方法などを、一部でも児童生徒自身に選ばせる場面を設計することで、学習の個性化の要素を取り入れられます。
個別学習と協働的な学びをセットで設計する
AIドリルでの個別演習だけで完結させず、その後の話し合いや発表、共同制作といった協働的な学びの時間と一体的に組み合わせることが、答申の想定する形に近づきます。
データは「見る」だけでなく「使う」
AIドリルが記録する正答率や学習時間のデータを、教師が児童生徒との対話や指導方針の見直しに活かして初めて、指導の個別化が学びの質につながります。
子ども自身が考えながら学べるAIツール
ウィンバードでは、個人情報を入力しない安全な設計のもと、子どもがAIと対話しながら自分で考える力を育てる学習AIツールをご提供しています。問題を自動で出すだけでなく、子ども自身が「どう考えるか」に向き合える設計です。
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