教育DX お役立ちコラム

【第10回】学校のデータはどこに置くべきか?~クラウド活用とデータ管理の基本~

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前回(第9回)、「情報漏えいを仕組みで防ぐ5つの対策」を紹介しました。その中で最初に挙げたのが「端末にデータを残さない」——クラウドでデータを管理することが基本です。しかし、こんな疑問を持った方も多いのではないでしょうか。

「クラウドって結局、安全なの?」
「何でもクラウドに上げていいの?」
「共有設定を間違えたら大変なことになりそう…」

クラウドは便利ですが、「とりあえず全部クラウドへ」では困ったことが起きます。データの種類と重要度に応じた正しい置き場を知ることが、学校のデータ管理の第一歩です。

学校のデータを「3つのカテゴリ」で整理する

学校が扱うデータはすべて同じリスクではありません。まず「どのデータをどこに置くべきか」の基準を持つことが重要です。
 
 

リスク高: 厳重管理が必要なデータ

成績・出欠・特別支援情報・家庭環境・健康診断結果など

置き場の基準
アクセス権限を最小限に限定したクラウドフォルダ、または校務支援システム内で管理。個人が特定できる情報は共有リンクを発行しない。

※特別支援情報・健康診断結果は個人情報保護法上の「要配慮個人情報」に該当し、取得・第三者提供に原則として本人同意が必要です。成績・出欠と同列に扱わず、より厳格な管理が求められます。
 
 

リスク中: 学校内限定データ(学校内のみで使うもの)

授業資料・学校行事の写真・会議資料・校内連絡など 

置き場の基準
学校のアカウント(Google Workspace for Educationなど)内の共有ドライブ。アクセスを学校ドメインのアカウントのみに制限する。なお学校行事の写真には児童生徒の顔が含まれる場合が多く、外部への共有は保護者同意の確認が必要です。

 
 

リスク低: 外部公開データ(外部に出せるもの)

学校だより・学校紹介資料・保護者向けお知らせなど

置き場の基準
学校HPや保護者向けポータルに掲載。クラウドの共有リンクを使う場合も「リンクを知っている全員」設定は、個人情報を一切含まないコンテンツに限定する。「保護者向け」であっても学年・クラス等の属性情報を含む場合は学校内限定データとして扱う。

 

  • 重要な考え方:最小権限の原則

必要な人だけが、必要なデータにアクセスできる状態を作ることが基本です。
これには2つの効果があります。

①外部からの攻撃でアカウントが乗っ取られても、アクセスできる範囲が限定されるため被害を最小化できる
②内部のうっかり操作
(誤削除・誤編集)のリスクも減らせる
 ——学校現場ではこちらも重要です。

クラウドでよく起きる「うっかり事故」TOP3

クラウドを使い始めた学校で実際に起きているトラブルのほとんどは、技術的な欠陥ではなく設定ミスや使い方の誤解が原因です。

共有設定の「リンクを知っている全員」を使ってしまう

Googleドライブで保護者にリンクを共有する際、うっかり「リンクを知っている全員」に設定してしまうと、Googleアカウントを持っていない人でもURLさえ知れば誰でも開ける状態——実質的にインターネット上に公開したのと同じになります。リンクを転送された第三者はもちろん、メールを誤送信した場合でも漏えいします。児童生徒名簿や成績データで起きると重大な漏えいになります。

 

対策

共有は「特定のユーザー(メールアドレス指定)」を基本に。「リンクを知っている全員」は個人情報を一切含まないファイルにのみ使用する。Google Workspace の管理コンソールでこの設定を組織全体で非表示にすることも可能です。


個人のクラウドアカウントに学校データを保存する

「容量が足りないから」と、先生が自分の個人Googleアカウントに成績データを保存するケースがあります。学校の管理が及ばないため、先生が退職・転勤後もデータが残り続けるリスクがあります。また、Google Workspace for Education(学校の組織アカウント)には広告目的の利用禁止など教育機関向けの厳格なプライバシー保護が適用されますが、個人アカウントにはその保護がありません。

 

対策
校務データは必ず学校や教育委員会が管理する組織アカウント内に保存する。個人クラウドへのアクセス制限は、MDMと連携したブラウザポリシー(Google管理コンソールのChromeポリシーなど)で設定できます。


クラウド同期中にランサムウェアが広がる

端末がランサムウェアに感染した場合、暗号化されたファイルが自動同期によってクラウドに上書き・置換され、クラウド上の正常なファイルが失われることがあります。「クラウドに上げておけば安全」ではなく、バージョン管理と定期バックアップが不可欠です。

 

対策
GoogleドライブやOneDriveはデフォルトでバージョン管理が有効ですが、保持期間はサービスやプランによって異なり上限があります(Googleドライブは上書きアップロードした旧版が一定期間後に削除される場合があります)。重要データは定期的にバージョン履歴を確認し、別の場所にも定期バックアップを取る運用が安心です。

「クラウドに置く」前に決めておくべき3つのルール

  1. どのデータをどこに置くか

    「成績は校務支援システム内のみ」「授業資料は共有ドライブ」など、データ種別ごとの置き場所を決める。なお学校行事の写真は、保護者同意の確認を行った上で学校内限定の共有ドライブに保管するのが基本です。

     
  2. 誰がアクセスできるか

    「このフォルダは○年担任のみ編集可・他の職員は閲覧のみ」のように、アクセス権限を役割ごとに設定する。年度末の異動後に前担任のアクセスが残ったままにならないよう、定期的な棚卸しも重要です。

     
  3. いつ削除・整理するか

    データの保持期限を自校のルールで定める。ただし法定保存義務があるデータは必ず法令に従う(例:指導要録の学籍に関する記録は20年、指導に関する記録は5年、出席簿は5年(以上、学校教育法施行規則第28条)、健康診断票は5年(学校保健安全法施行規則第8条))。法定期間が過ぎたデータも、自治体・学校の情報管理規程に従って廃棄または継続保存を判断する。「期間が来たら即削除」という義務はなく、規程に基づく判断が必要です。

まとめ

クラウドは「置けば安全」ではなく「正しく置いて安全」

クラウド事業者のインフラ自体は高いセキュリティ水準で管理されています。しかし、設定ミスや使い方の誤解があると漏えいが起きます。データの種類に応じた置き場所、最小権限の設定、定期バックアップの実施——この3点を意識するだけで、学校のデータ管理は大きく改善できます。

クラウド 安全

今日の「5分でチェック!」

確認してみましょう

学校で扱うデータが
厳重管理が必要なもの(成績・健康診断結果など)
学校内限定のもの(授業資料・写真など)
外部公開できるもの(学校だよりなど)
の3種類で分類・管理されていますか?

クラウド上のフォルダやファイルの共有設定に
リンクを知っている全員」になっているものがないか確認しましたか?
(この設定はGoogleアカウント不要で誰でも開けるため、個人情報を含むファイルには絶対に使用しないでください)

先生個人のクラウドアカウント(私用Googleアカウントなど)に
校務データが保存されていないか確認しましたか?

「なんとなくクラウドへ」ではなく、「ルールを持ってクラウドへ」が学校のデータ管理の基本です。

この記事の著者

ウィンバード 教育DX準備室
ウィンバード 教育DX準備室
教育DXパッケージ 推進担当。 これまで全国の学校で数百回におよぶ設定支援や講習会講師を務めた経験を持ち、現場目線での課題解決が得意。 「導入して終わり」にさせない、運用定着までを見据えた実務的なアドバイスを心がけている。 保有資格: ・Google 認定教育者 Level 1 & 2 ・Professional ChromeOS Administrator ・Professional Chrome Enterprise Administrator

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